カスタマー平均評価: 5
ロシア史への入門にも良い。 当時高校生だった私のロシア史への扉はこの本でした。ドイツの小国の「容姿には恵まれなかった」公女が、自分の知性と努力でロシアの女帝への階段を登ります。ロシアの血を一滴も持たない彼女が「大帝」と呼ばれ、輝かしい治世を歴史に残す…あり得ないような話だと最初は思いましたが、エカテリーナという傑出した人物、その並外れた頭脳と精神力、魅力を見出だし、納得させられました。池田理代子先生の描くエカテリーナは最初は器量よしとは言えない女の子ですが、忍耐と年月を重ねるごとに美しさが増して行きます。彼女の知性と人柄が内面から美しさ、魅力を出すようになるのが分かります。あと、エカテリーナの愛人だったグレゴリー・オルローフがお役目御免になった後、放蕩している時に偶然プガチョフ一行と行動を共にする事になっちゃった、という設定が面白かったです。「プガチョフの乱」を近い視点で見る事が出来て、興味深かったです。この作品でエカテリーナという偉大な女性の軌跡を知れただけでなく、ロシアという国の歴史、風土のイメージがつかめました。 壮大な物語です 帝政ロシア時代の女帝、エカテリーナ二世の生涯を追ったドラマです。 ロシアの血を一滴も持たないドイツの田舎貴族の娘…それが、幼少時のエカテリーナ。 そんな彼女が野心に燃え、ロシア皇太子の妃となります。 野心に満ち、数奇な愛に翻弄された人生。 為政者としての並外れた器量と、理想と現実とのギャップ、老いによる精神及び肉体の変容…。ここには、彼女の全てが描かれています。 ありきたりの「偉人伝」ではありません。 世界史で習うような姿はどこにもありません。 どこまでも生々しく、赤裸々に一人の人間としてエカテリーナ二世は描かれています。 この作品の中で、生き、悩み、そして死んでいきます。 エルミタージュ美術館を創立し、国の母と崇められたエカテリーナ二世。 そして、晩年「ピンクの色眼鏡をつけている」と揶揄された女帝。 野心、夢、失望、出会い、別れ…一人の人間の一生を追体験する、壮大なドラマです。 気軽には読めません。 圧倒的な存在感と、パワーが溢れてきますので、どうしても頭も心もエカテリーナでいっぱいになってしまいます。 どうぞ、じっくり腰を据えて読んでみて下さい。 紅海を渡る瞬間 池田理代子の歴史漫画作品は「ベルサイユのばら」に始まって「オルフェウスの窓」を頂点とし、その後はどうも暗くなりすぎ・地味になりすぎて下降気味の印象を受けるのですが、この作品は少女マンガと大人向けマンガのちょうどいいバランスが保たれていると思います。特にエカテリーナが女帝の地位に就くまでの前〜中篇が面白い。あまり容姿に恵まれなかった、そのかわり知性には大いに恵まれた14歳の少女が、幼い野心をしたたかな権力闘争能力に変え、幼いときからの野望を追い続ける姿は異様な迫力に満ちています。でも戦いのなか、彼女の女としての甘い夢は、夫にも恋人にも裏切られて無残に破れていく。そういう彼女の微妙な心の揺れが描かれる作品前半がいちばん面白いです。「たとえこの恋慕の情は断ちがたくとも、この私に飽きたという男のことなど、今日から二度と再び考えるまい」「もう二度と恋に傷ついて泣く女にはならない」「決して男性を自分の世界の中心には置かない」。そして、優しくて誠実な男性から差し伸べられた真実の愛の手を拒み、「この手を離してはいけなかったのかもしれない。これは最後の扉だったのかもしれない。人間らしく、一人の女らしく立ち返るための」。 そしてエカテリーナは恋人も友人も道具として使う孤独な王座への戦いに突き進みます。いよいよ人生の賭けに出る彼女の言葉、「神よ、私は紅海を渡ります。この海を分かちたまえ」。スケールの差はあれ、どんな人生にもこういう瞬間ってあるよなあ、と受験を控えたおばかな高校生だった私は思いました。 もっともロシアを具現した女帝 時代は18世紀ロシア。 エカテリーナII世は元はゾフィーという名の二流貴族の公女。母の出自などのめぐり合わせからロシア女帝エリザベータよりロシアに招かれる。皇太子ピョートルの妃候補として―― エカテリーナと名を改め皇太子妃になっても皇太子には生殖能力がなく、暗黙の了解で愛人との間に公子をもうけることになる。愛人への思いに悩み、傷つき、やがて、愛人との関係と自分の置かれた状況を知性と判断力で完全に分けられるようになる。 ロシア帝国の宮廷においてどのように身を処せばよいか判断し、運命を待ち、また自ら運命をつくる。 エカテリーナの雌伏の時である。 彼女の知性と教養、なによりロシア人であらんとする努力、これだけでもエカテリーナは類まれなる女性である。 運命は彼女に何を与えようとしているのか?さあ、次巻である第二巻へ! ストーリーとしても面白いし、歴史の勉強にもなる 最近は歴史を題材にしたマンガが多く見られますが、本作品ほどディテールにとみ、ストーリーとしても面白く、またロシアの歴史、ひいては歴史一般に対する興味をそそるマンガはないのではないでしょうか。つまらないことをして時間を過ごすぐらいだったら、このようなマンガを読んだ方が100倍有意義に過ごせると思いました。
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