まんが文庫店

良書には違いないが
読み終わった後のこの違和感、いったいなんだろうと悩んでしまった。
そしてそれは、２話目に登場する主人公、横田寛氏のストーリーにあると思った。
彼は自身の著作（ああ、回天特攻隊）があるのだが、その著作を元に描かれたこのストーリーは、いささか、彼が自書で伝えていたものと微妙に違う。

製作にかかわった方々は信頼のある方々であるため、晩年も含めての横田氏の想いを再現したものではあるだろうが、あとがきに、横田氏本人が生前、
『俺の気持ちは誰にもわからない』と言ったとあるとおり、この本もまた、横田氏の本心には触れられていないと思う。
この本だけでなく、横田氏の著作もぜひ手にするべきだ。

強烈なエネルギー
『蒼天航路』を連載する前に描いた王欣太の作品。
　内容はというと……う〜ん、どうだろうか？　強烈なエネルギーを感じるし、レベルの高い画力も堪能できるのだが、「荒削りすぎる」ところがある。そこが残念。
　あまりにも個性的過ぎる資質を持つため、素材選びで苦労するだろうが、個人的には任侠物とか戦国時代を描かせたら面白いのではないか、日常を描くのには無理があるのではないか、と。まあ、とにかくこの人、モラルが崩壊した状況を描くのには向いている。そして、この作品もその方向性に乗っかっているが如何せんキャリアがなかった……。
憧れの人物
とにかく話が面白い。そして絵も生き生きとしている。
しかしなんといっても一番素晴らしいのは主人公トーマの圧倒的なカリスマ性だろう。
彼は不幸な人間に幸せをもたらしてくれる。そして彼の周りにはいつも仲間がいる。
何にも束縛されない、自由が意志を持って歩いているという感じ。まさに天使。
読んでいてここまで気持ち良い作品はそうないだろう。

エネルギーが満ち溢れた超力作だと私は思っている。