カスタマー平均評価: 5
美しくも哀しい超大作の後編 源氏物語の本編をこの「あさきゆめみし」で読んだのは、もう10年くらい前のことである。宇治十帖がないことには気づいていたが、大判が見つからないのは売り切れているせいだと思って、長い間探し続けていた。結局、大判は出ていなかったようで、このたび仕方なく文庫版で読了。なぜ大判が出版されなかったのか、不思議としか言えない。最近、源氏物語を単なる放埒な恋愛ドラマとして解釈する傾向があり(江川達也のまんがはその最たる例)、それなりに古典の普及に役立っていたりもするようであるが、この「あさきゆめみし」本編(文庫版第5巻まで)では仏教の因果応報論が色濃く出ていて、華麗な中にも無常観の漂う、他とは比較を絶した傑作となっていた。これに対して第6巻からの宇治十帖編はより純粋な悲恋物語であるが、作品の完成度は高く、光源氏の生涯を描く本編にまったく見劣りしない名品である。 高校の頃苦しんだ「源氏」を、新たに文学として楽しむための入門編として、これ以上の作品はないと思う。なお、作品中の人間関係の複雑さに辟易したら、宝島社から出ている解説本「あさきゆめみしPerfect Book」(別冊宝島880)、「今だからわかる源氏物語」(同898)がともに有用である。 橋姫からだいたい寄生(やどりぎ)まで 宇治十帖の前半、「橋姫(はしひめ)」、「椎木(しいがもと)」「総角(あげまき)」「早蕨(さわらぎ)」「寄生(やどりぎ)」を漫画化。 八の宮の娘大君(おおいぎみ)と中の君(なかのきみ)をめぐった、薫と匂う宮(におうみや)の話。 匂う宮は中の君と結ばれ一子(男児)をもうける。中の君は対の上として匂う宮の妻の中でも重んじる女として傅かれる。しかし、匂う宮はよく言えば情熱的、ぶっちゃけて言えば浮気な男である。 それに対し薫は自分が何者であるか求め、仏法に精進し宇治の八の宮と知り合い、自分の素性をしり、そこで大君と中の君を見いだす。薫は大君に想いをかけるが退けられたまま大君は病死してしまう。 ところが、・・・大君と中の君の他に別腹の姫がいた!この姫は薫の心を癒すことになるのか? 私は薫と匂う宮、ふたりの愛し方の違いが、姫君達の運命を変えたに違いないと思う。どちらを選べと言われれば、わからないけれど・・・ 亡き夕顔の忘れ形見 亡き夕顔の娘、玉鬘。身寄りのない彼女を、源氏は養女としてひきとります。美しく才もあり、昔愛した夕顔の娘だというので、源氏の君は玉鬘に想いを寄せていきます。そして亡き藤壺の宮に似た、朝顔の斎院にも。 今はもういない恋人達の面影を求める光源氏。歳をとっても、彼のこういう本質的な性格は変わらないなーと思いました。でも、それに悩む紫の上が可哀そう・・・。 あとは、光源氏の息子夕霧と、頭の中将の娘雲居の雁の幼い頃の初恋が描かれています。ここの話はとても微笑ましくて、お気に入りです。夕霧も雲居の雁もすごく可愛い! 個性豊かな女性達 1巻で六条御息所の生霊によって源氏の腕の中で息耐えていた夕顔。その夕顔の娘、玉蔓が登場します。源氏の往年のライバル、頭中将と夕顔の間に生まれた娘だけあって、華やかな美貌に恵まれたお姫さまです。こうして源氏のまわりの女性陣にまた1人新しい人物が登場するのですが、玉蔓の生粋の芯の強さがしっかり描かれています。 女性陣といえばお正月に源氏が女性達の着物を選ぶのですが、この場面ではそれぞれの女性達の個性が衣装を通してはっきりと語られています。作者の大和和紀さんが描かれたそれぞれの魅力的な女性たちを通して、さらに盛り上がりを見せる6巻です。
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