まんが文庫店

ペテロが聖ペテロとなった日
　おそらく意識してのことだと思うが、同じ安彦良和氏が描いた｢イエス｣におけるペテロとこの作品でのペテロは連続性のある一人の人物だ。 　そして、この作品において、ようやくペテロは真の｢イエス｣と出会うことになる…。 　有名なローマから逃げようとするペテロ前にイエスが現れるシーン。 　ネロの描き方や、全二巻でどこまでこのネロという男を描きつくせるのか、などの疑問もあるが、このペテロのシーンだけでも価値がある。 　というか、パウロとの描き方の差から言って、このペテロのシーンを書きたいがためにこの作品を書きたかったのでは、と勘ぐりたくなるぐらい素晴らしいシーンである。
通説には囚われない新たなネロ像
正妻オクタビアを殺した上、愛人ポッパエアと結婚するネロ。やがて政治に倦み、芸術とスポーツ、享楽的な生活に耽溺する。一方でローマ下層民層に広がるキリスト教。ネロはローマの大半を焼いた大火の際に消火活動と都市の再建に指導力を発揮するが、放火犯としてキリスト教徒へ弾圧、虐殺を始める。

ストーリーは奴隷身分で皇帝お抱えの剣闘士レムスの視点から描かれる。もともとの連載時の問題からか、第二巻に入っては展開が急ぎ足になる。
暴君で精神障害だったといった通説のイメージに囚われないネロ像を描いたという点で興味深い。それだけに後半の展開が急いだのは残念。